月に憑かれて
月に憑かれて
今宵 また あの月が
まん丸い不毛な天体が
真っ黒けの夜空を背にして ぽっかりと浮かんでいる
この疲れたまなこは 陶然として汲む
ほの暗い黄金色した月影のワインを
昨晩はお目にかかれませんでしたが 今晩は現れましたね
気まぐれなお月様
地上のさすらい人にとってあなたこそは慰安
いつもほんのり心に沁みてくるのです
どこでお会いしても 馴染み深いそのお姿が
2019年11月20日
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月に憑かれて
今宵 また あの月が
まん丸い不毛な天体が
真っ黒けの夜空を背にして ぽっかりと浮かんでいる
この疲れたまなこは 陶然として汲む
ほの暗い黄金色した月影のワインを
昨晩はお目にかかれませんでしたが 今晩は現れましたね
気まぐれなお月様
地上のさすらい人にとってあなたこそは慰安
いつもほんのり心に沁みてくるのです
どこでお会いしても 馴染み深いそのお姿が
2019年11月20日
「道路と土手と塀」
ついに
お目当ての絵の前に立つ
画家R.Kの風景画の白眉
白い塀のつややかなマチエール
坂の上は浮き立ち
青い空にはうっすらと雲が浮かんでいる
土手際の樹木はほのかな風を匂わせ
リアルな電信柱の影
精緻に描きこまれた草…
東京駅の赤レンガの駅舎の中
至高のポエジーを体感した
生涯忘れえぬひととき
2019年9月22日
暑気
真夏の午後零時
照りつける太陽が中天にあるので
街角に日陰はほとんどない
涼に餓(かつ)えながら
行きつけのカフェめざして
むんむんする暑さの中を突っ切っていく
クーラーが効くのは屋内だけ
どんなに文明が進化しようとも
外を涼しくするなんてできやしない
百年後も
二百年後も
人はこんな暑さの中を
黙って突き進んでいくことだろう
今のこのわたしのように
2019年8月9日
天気雨
雨があがって
明るい日が射していた
なのに
パラパラと降りかかってきた水のしずく…
お日様と雲がやらかした
お茶目なコラボレーション!
2019年7月14日
目印
なぜかいつも
そこで
電車を待つ
地下鉄のプラットホーム
さるリーズナブルなホテルの広告の正面
パネルの片側で
緑の帽子をかぶった女社長が
ご満悦げにこちらを見ている
2019年6月29日
ミルクスタンド
とうの昔に消え果てていると思っていたものが
あったのだ
ミルクスタンド
秋葉原駅のホーム
昔ながらのあの位置に
あのたたずまいで
パンと牛乳を交互に口に運んでいる
客人たちの姿も健在だ
めまぐるしい変化を遂げつつある秋葉原にあって
なお変わらないもののゆかしさ…
立ちながらにしてパンとミルクをほおばれる手軽な売店
ミルクスタンドよ永遠に!
2019年6月15日
朝
根気よく降り続いていた雨も
どうやらお疲れのよう
梅雨の雨あがりは
あの湿り気を帯びた空気が心地よい
広い車窓を横切っていく
くさぐさの風物
荒川は眺望はるかに滔々と流れゆき
飛鳥山公園の紫陽花は今年も盛況
尾久駅は相変わらずひなびていて
広漠たる雲がちの空に
清澄なる青い晴れ間が見えた
2019年6月12日
公園のベンチにて
まちなかの公園には
そんなに楽しいものはなさそうです
あまりきれいでもないベンチが
広いスペースを取り巻いていて
みなさんそれに腰掛けて
煙草を吸ったり スマホをいじったりされていますが
なんとなくけだるいような
退屈そうなご様子です
時々 笑顔で話を交わす仲間たちや
仲睦まじいカップルも見受けられますが
公園そのものをエンジョイしているわけではないでしょう
煙草の吸殻やコンビニの袋が落ちていますし
所在なさげに歩を進める鳩も
小さな花壇に咲く花も
どこか垢じみています
まちなかの公園には
そんなに楽しいものはないのです
あるものといえば
粉塵にまみれて色艶の衰えた樹々と
思いついたように吹き過ぎてゆく風ばかり…
2019年6月5日
好ましきもの
壁にかかっている絵
巴里
セーヌ川
すがれた樹木
陰鬱な空
オフィスの廊下にビュッフェの風景画は必要だろうか
ただ
癒される者は癒されるのだ
2019年6月1日
ノスタルジー
沈みゆく夕日を見た
高層ビル群の少し上方 茫漠とした灰色の空の中
ほっそりとした白雲がたなびいている薄黄色い日輪
遠い昔 山の端に落ちかかっていたあの入日と寸分もたがわない
あふれ出る郷愁が
限りない安らぎをもたらしてくれる
2019年3月31日