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2017年4月

2017年4月29日 (土)

ゆらめき

ゆらめき

 

 

明るい春の青空の下

とあるベンチに腰をおろす

 

朝方の新鮮な空気とあいまって

吹き過ぎるそよ風が心地よい

 

この風に

そこここの樹木たちの枝葉が揺らぐ

 

近くの灌木の赤黒い葉っぱたちは

ごく控えめに震えている

 

遠くに見える丈高い木の緑葉が

枝もろとも悠揚となびいているのとは対照的だ

 

だが 揺らいでいるのは

それら生い茂っているものだけではない

 

日差しを受けたプロムナードに

かの赤黒い葉っぱたちが影を落としている

 

光の中でたゆたう

黒黒としたシルエット

 

その揺らぎは微妙に変化する

わたしの肌が感じる風の強さの度合いに応じて

 

風と影が織りなすこの妙なるゆらめきが

見つめるわたしを没我の境地へといざなってくれる

 

 

 

2017年4月29日

2017年4月22日 (土)

馴染む

馴染む

 

 

夜の駅前広場で

待ち時間をつぶす

 

自販機で買った

温かいペットボトルの緑茶を手にし

ベンチに腰掛けて

 

ベンチと言っても

差し渡しの違う上下二つの金属製の円から成る

ごくシンプルなもの

 

さぞかし掛け心地が悪いだろう

とても長くは居られまい

 

そんな懸念から

初めはためらっていたものの

疲れた体はどこかで休めねばならない

 

だが身をゆだねているうちに

不思議と違和感が消え去った

 

背もたれこそないが

体全体のバランスはよく保たれている

いつまでもこうしていられそうだ

 

食わず嫌いはもったいない

何事も慣れが肝要

 

そのうちには

お互いしっくりと馴染んでくる

 

 

2017年4月22日

2017年4月20日 (木)

闖入者

闖入者

 

 

いちめんに赤い花の咲き誇る

高層団地の植え込みの中に

サッカーボールがひとつ埋まっている

 

いつからそうなのかはわからない

初めて見かけたのは

ある雨あがりの朝だった

 

もう何日も経つが

いつ見ても

ボールはそこに置かれたまま

 

入り込んだ場所が悪かった

誰しも取りに行こうとはしないだろう

花々を踏みにじってまで

 

わたしにとっては

花壇の格好の添景になっているあのボール

なるべく長くそこにいてほしい

 

小鳥でもなく

蝶でもない

予期せぬ闖入者が

花咲き匂う植え込みに

一種不釣り合いな趣を添えている

 

 

2017年4月20日

2017年4月15日 (土)

やさしい追跡者たち

やさしい追跡者たち

 

 

夜空にぽっかりと浮かんでいる

まん丸い月

 

すぐそばに

小さな星がひとつ

従者のごとく控えている

 

わたしは歩行している

夜の巷を

 

あの二人

わたしがどこまで歩こうと

ずっと同じところから見おろしている

 

あたりのビルは

どんどん後ろに流れ去っていくというのに

 

右に行こうが

左に行こうが

立ち止まろうが

じっとこのわたしを見つめている

 

物陰に隠れてやろうか

 

だがおそらくは

ほどなく

あのやわらかな黄金色の光が恋しくなるだろう

 

どうやら逃れられそうにない

夜空にたたずむ追跡者たちの

あの清らかでやさしい眼差しからは

 

2017年4月15日

2017年4月 9日 (日)

えんじ色の葉むら

えんじ色の葉むら

 

 

大きなビルの傍ら

歩道と境(さかい)成す 瀟洒な鉄柵の向こうで

無数のえんじ色の葉っぱが

小刻みに震えている

 

春の日の昼下がり

やわらかな日差しと ほのかな風を身に受けて

 

歩道と並行して連なっている

これら数多の葉っぱたちは

その色と動きで自らを主張し

道行くわたしに挨拶をよこす

 

すると

わたしの感受は葉むらへとなびく

 

これは天然の画廊

 

あたかも名画を賞でるがごとく

目はシックな色合いの葉むらへと惹きつけられ

 

この露天のギャラリーを出るにあたり

ビル際の葉っぱたちとの素敵な出会いに感謝する

 

 

 

2017年4月9日

2017年4月 8日 (土)

風変わりな夜空

風変わりな夜空

 

 

雲が月をかすめて走る

 

今宵 あの天体は煙に包まれている

さぞ煙たかろう

 

ところで 夜空だが

いつになく奥行きがない

 

青黒く光のない 平べったい表面を

雲たちが 大きな鱗のように覆っている

 

むくむくとした灰色の意匠を凝らした

果てしなく広がる天井のようだ

 

今夜の空は 崇高さからは程遠い

かえってどことなく近しい

 

空にも表情があるようだ

 

時々眺めては

その変わりようを楽しむことにしよう

 

 

2017年4月8

2017年4月 2日 (日)

進化

進化

 

 

朝 電車に乗り込む

 

すぐ次の駅で降りるので

ドア際に立つ

 

スーッと閉まるドア

と 鼻面に広告シールが滑り出てくる

 

ある売れっ子女優が

こちらを向いて微笑んでいる

 

ちょっと目の保養になるとはいえ

いささか邪魔くさい

 

そういえば

昔 こんなものは張り付けられていなかった

 

駅名の掲示も

動画のCMも

かつては存在しなかった

 

消えてしまったものもある

車両と一緒に揺れていた吊広告

切符の検札…

 

吊り革の形は丸から三角へと変わり

格段に握りやすくなった

 

物質文明は日々確実に進化している

わたしの体は退化しているというのに

 

せめて感性だけは退化せず

むしろ進化してほしい

 

詩を書き続けていくためにも

2017年4月2日

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