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2017年3月12日 (日)

黄昏の月

黄昏の月

 

 

夕方の帰宅ラッシュで

駅前は混雑していた

 

雑踏の中で ふと目を上げると

駅舎の真上 薄青色の大空に

まん丸い銀色の天体が ぽつねんと浮かんでいる

 

このくっきりとして微動だにしない代物が

何やら人の顔に見えてきた

あくせく動き回る地上の有象無象を

高みから冷ややかに見おろす顔に

 

ああ 孤高の天体よ!

きみはいつの時代でも どの国にあっても

夜の巷を眺めようと

ひょっこり顔をのぞかせる

 

二百年前のドイツでヘルダーリンを感動させ

名編「夜」を書かせたきみが

今 ささやかな詩趣をもたらしてくれた

 

これから何度きみを拝むことだろう

ある時はまん丸顔 またある時は細面

ある時は温かな そしてある時は冷ややかなきみの顔を

 

そのたびにわたしは何かしら詩情を感じるだろう

そして味わうことだろう

きみの光から

極上の美酒を

 

 

 

2017年3月12日

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