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2017年2月25日 (土)

夕暮れの調べ

夕暮れの調べ

 

 

とある公共施設の最上階に

古くて小さな図書館があった

 

エレベーターはなく

狭い踊り場のある螺旋階段を上らなければたどり着けない

ちんまりとしたライブラリー

 

古びた場所にお似合いの

古びた本をあれこれと渉猟しているうちに

いつしか暮れ方になっていた

 

夕刻の光が館内に射し初めるころ

きまって若い実直そうな男性スタッフが

小ぶりなカセットレコーダーを床に置き スイッチを入れる

 

と 流れてくるのは典雅なパヴァーヌ

さるフランスの作曲家の手になるスローテンポの管弦楽曲

閉館の合図だ

 

この楽音とともに

平凡だがつつがない一日が暮れようとしていた

 

今 カセットテープは過去のものとなり

あの施設もモダンな建築物に建て替えられた

 

が あの夕暮れの光の中に浮かぶ懐かしい光景と優雅な調べは

わが春の時代の安穏に抱かれたひと時の追憶として

心の中で消えることはないだろう

決して色褪せることはないだろう

 

 

 

2017年2月25日

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