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2017年2月

2017年2月25日 (土)

夕暮れの調べ

夕暮れの調べ

 

 

とある公共施設の最上階に

古くて小さな図書館があった

 

エレベーターはなく

狭い踊り場のある螺旋階段を上らなければたどり着けない

ちんまりとしたライブラリー

 

古びた場所にお似合いの

古びた本をあれこれと渉猟しているうちに

いつしか暮れ方になっていた

 

夕刻の光が館内に射し初めるころ

きまって若い実直そうな男性スタッフが

小ぶりなカセットレコーダーを床に置き スイッチを入れる

 

と 流れてくるのは典雅なパヴァーヌ

さるフランスの作曲家の手になるスローテンポの管弦楽曲

閉館の合図だ

 

この楽音とともに

平凡だがつつがない一日が暮れようとしていた

 

今 カセットテープは過去のものとなり

あの施設もモダンな建築物に建て替えられた

 

が あの夕暮れの光の中に浮かぶ懐かしい光景と優雅な調べは

わが春の時代の安穏に抱かれたひと時の追憶として

心の中で消えることはないだろう

決して色褪せることはないだろう

 

 

 

2017年2月25日

2017年2月19日 (日)

図書館

図書館

 

 

金曜日の夕刻

町の図書館に寄ってみる

 

複合施設の中にある

ワンフロアの広々としたライブラリー

 

館内に入るや

あの好ましい静けさとほのかな書物の香り

 

気持ち毛羽立った鼠色の敷物が

耳障りな足音を消してくれる

 

長い木製の棚から一冊の本を手に取り

背もたれのない小さな椅子に腰を下ろす

 

バッグは椅子の下に置いておこう

ここでは 棚の片側が背もたれになってくれる

 

読み始める

よほど面白ければ借りようか

もっとも今日はカードがないので借りられないのだが

 

どうやら借りるほどではなさそうだ

もう一冊 棚の最下部から取り出してみる

立ち上がると 軽いめまいが

平日最終日の疲労感

 

こんなふうに 本を手にして小一時間を過ごす

無数の書物と熱心な読書家たちに囲まれて

 

出入り自由で知的興味をそそられるこの静謐な空間

やはり何度でも訪れたくなる

2017年2月19日

2017年2月11日 (土)

駅前のドラマ

駅前のドラマ

 

 

カフェのテーブル席に着く

 

正面には大きなガラス窓

 

彼方までまっすぐ伸びた大通りと明るい空

行き交う人々 車 自転車…

 

駅前の真昼の光景 音無きドラマが

今 広い窓枠の中で展開している

 

オバチャンがチャリンコで こちらに向かってきた

 

せわしく回転する足!

その動きが 店内に流れる急テンポのBGMとよくマッチする

 

しばしミルクティーを片手に

この心地よい音楽の付いた動画を堪能しよう

 

興趣を添えてくれるのは

画面をゆっくりと横切る鳥の影

 

あの鳥は いずこから来て いずこへ行くのか

 

人も 車も 鳥も

みないつのまにか どこかへと去ってゆく

クリアな画面から消えてゆく

 

このささやかな駅前のドラマは 確かに進行している

 

真冬の白昼の 緩慢な時の経過とともに

 

 

2017年2月11日

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