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2012年7月 8日 (日)

霧の朝

Photoイワン・ツルゲーネフ(1818~83)は、一般的には小説家として知られていますが、そのキャリアの初期と後期においては優れた詩も書いていて、彼の作品がいかにリリシズムに富んでいたかを物語っています。

『霧の朝』(ウートラ・トゥマーンナエ)というロマンスは、ツルゲーネフが書いた詩に、アバザという作曲家が曲を付けたもので、ロシアのロマンスの中でも最も有名なものの一つです。

詩の内容は、霧立ち込める雪景色の荒野を馬車に乗って行く作者が、ふと、昔、故郷で体験した人々との出会い、別れ、恋などを思い出し、しばし追憶にふける、というもので、その内省的な雰囲気が、付けられた旋律の感傷性とよく溶け合い、魅力的な抒情的小歌曲になっています。

ご参考までに、拙訳を載せておきたいと思います。



霧の朝



霧の朝、灰色の朝、

哀しき畑は雪で覆われ・・・

ふと思い出す、過ぎ去りし時、

懐かしき顔々が浮かび来る。



思い出すは、熱のこもったおしゃべり、

情熱的なまなざし、内気なまなざし、

初めての出会い、最後の出会い、

密やかな愛しき声音。



思い出すは、別れの時の不可思議な微笑み、

遠く過ぎ去りし、故郷での事々・・・

絶え間なき馬車の車輪の音を聞きつつ、

広漠たる空を物思わしげに見やりつつ。

『霧の朝』

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コメント

いつも 私のしらないものを教えて頂いてありがとうございます。
ツルゲーネフは、何故か昔から好きだったのですが その魅力は
あからさまな 「自分」のような気がします。
この詩も また時代を超えて通じる 人間の感覚ですね。

=別れのときの 不思議な微笑み==
実に 納得します。彷彿とするものがあります。

> kawasemi さん

ツルゲーネフは、トルストイやドストエフスキーなどに比べると、
良い意味で思想性の希薄な作家で、私たち日本人には、
わりとすんなり入っていける世界なのかもしれません。

『散文詩』をはじめとする詩作品においても、
まさに「あからさまな自分」を「時代を超えて通じる人間の感覚」で
表現していて、大いに共感できます。

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