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2012年5月12日 (土)

蛇使いの女(愛しの名画たち 9)

『蛇使いの女』(1907年 油彩 169×189㎝ パリ、オルセー美術館)は、『眠れるジプシー』等と並んでアンリ・ルソー(1844~1910)の描いた有名な作品です。

アンリ・ルソーは、その「税関吏ルソー」というニックネームのごとく、画業を本業としない独学の日曜画家で、その作品にもどこか流派に囚われない自由で奔放な想像力を感じさせる雰囲気が漂っています。

この名高い作品にも、そんな彼一流の画風が十分うかがわれると思いますが、他の「異国風景シリーズ」(例えば『夢』)などとは、色彩や構図の点で異なる風合いをしています。

この作品の注文主は、画家ドローネーの母親で、ドローネー自身も詩人アポリネールや画家ピカソ同様、ルソーの崇拝者でした。

Photo
ルソーという人はほとんど旅行をしなかったらしく、この絵の主題である南国にも一度も行ったことがなかったのですが、パリの植物園の樹木や万国博の異国館の印象に基づき、彼の空想によって描いたため、画面上の植物や動物も、この世にはありえないような不思議な外貌をしています。

この絵画の魅力は、私に言わせれば、その優れた構図や色彩もさることながら、全体の雰囲気から感じられる神秘性と静けさで、蛇使いのまわりの自然は、彼女の魔力によって完全に静寂のうちに支配されている感があります。

「現代プリミティブ芸術の父」とも呼ばれ、またいかなる流派にも属さず何らかの本業を持ちながら独創的な作品を生み出していった、いわゆる「素朴派」の代表格としてのアンリ・ルソーの面目躍如と言えるかもしれません。

余談ですが、オルセー美術館でこの絵を見ていた時、どこか後ろのほうで日本人観光客を引率していたガイドさんが、「あそこにアンリ・ルソーの『蛇使いの女』があります」と案内していたのを記憶しています。とにかく、有名な絵ではあります。

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コメント

こんばんは、 
ルソーの絵は面白いですね。なかでもこの「蛇使いの女」は
素晴らしいですね。  田中一村が 浮かびます。
オルセー美術館にあるのですね。
一村は、奄美へ行くまでは、素晴らしい日本画の才能を持った方ですが
すべてを捨てて南国へ行って画風を変えた。 何ものも思わずただ描いた
そういうところが ルソーと 画風ではなく似ているように思います。

> kawasemi さん

田中一村については、以前たった一作、奄美へ行ってからの絵(の写真)を見たことがあるのみですが、確かに彼とルソーには通底するものがありますね。

画壇からの束縛もなく自由にみずからの画風を確立していったこと、南国のエキゾチックな風物を描いたことなど、言われてみると共通点が多いです。

「ルソーの絵は面白いですね。」 彼の絵には、自由奔放で想像力に満ちた不思議な魅力があると思います。 

makoのファインダーにコメントありがとうございます。見ての通りの花の写真中心のブログです。
文章は福岡県の宗像方言です。故郷の言葉を忘れないようにと思って使っています。
それにしてもアート鑑賞という高尚な趣味ですね。小生も美術品を鑑賞するのは好きですが、趣味というほどでは無く、たまたま、ときどき、興味深い作品が展示されたときに覗きに行きます。
絵画を観ていつも感心するんですが、表現するテクニックがとても多彩で奥が深く、写真では到底かないません。
写真はカメラ本体とレンズの性能、良い被写体で8割方決まります。残りの2割がテクニック、センス、経験といったところでしょう。良い作品を沢山鑑賞して腕前を上げようと努力はしているんですが、なかなか進歩しません。

mako さん、コメントありがとうございます。

お写真と文章に、ほのかなやさしさとあたたかみが感じられて、魅了されました。
決して奇をてらったような作品ではないのに、どこか惹かれるものがあります。

以前、学友に九州出身者がいて、その人の言葉によく似ていたので、もしやと思いましたが、やはりそうでしたか。
方言で記事を書く人はあまりいないので、貴重な存在かもw

いえいえ、ただの下手の横好きってやつでして・・・ でもアートに対する愛は、かなり強いと自負してますw

私も最初は絵画のほうが写真よりも表現できる幅がずっと広いと感じていて好きだったのですが、最近ではみずから下手な写真をコンデジで撮るようになったこともあって、写真の難しさや面白さが僅かながらもわかるようになりました。

中学生時代、写真好きの友人が「写真のほうが絵よりも進んでるんだよ」と言っていたのを覚えていますが、確かに被写体によっては写真のほうが表現媒体としてふさわしいものもあるような気もします。

mako さんは、私などよりはずっと写真にお詳しそうだし、キャリアも豊富そうなので、また何かとご教示いただければ、と思っています。
これからもよろしくお願いします。

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