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2012年4月 5日 (木)

シバの女王の船出(愛しの名画たち 3)

フランスのクロード・ロラン(1600~82)は、いわゆる「理想的風景画」を描いた巨匠ですが、この『シバの女王の船出』(1648年 油彩 148×193㎝ ロンドン、ナショナルギャラリー)も、傑作の一つとしてつとに有名です。

旧約聖書に出てくるソロモン王とシバの女王のテーマは、古来さまざまな画家(例えばピエロ・デラ・フランチェスカ)によって描かれてきましたが、それらのほとんどはソロモン王がシバの女王を「迎える」場面であって、この作品のようなシバの女王が「旅立つ」場面を描いたものは珍しいそうです。

シバの女王がイスラエル王ソロモンの知恵を自ら確かめるために旅立つ時のシーンを描いたこの作品には、作者ロランのエッセンスともいうべきものが多く盛り込まれているように思われます。

Photo_3

この画家の真骨頂である、前景、中景、後景の巧みな処理による無限的な距離感の創出は言うまでもなく、太陽光の微妙なきらめきとその海への反射、風による波の揺らぎや樹木のそよぎなどが、デリケートな筆致で巧みに描かれています。

ロランは若くしてローマへ移住し、そこが終焉の地となったわけですが、彼の作品によく登場する古代ローマ風の建築物の描写も秀逸だと思います。

この港は画家の想像上のものだそうですが、右手に、今まさに小舟に乗り移ろうとしている女王が多くの従者たちとともに描かれ、前景には土産物を運ぶ人たちや、見守る人々が詳細に描かれています。

しかし、他の多くの作品と同様、画家の最大の関心事はそれら人事にではなく、あくまでも昇り初めた太陽や高みにある雲、はるかな水平線や波しぶき、といった美しい自然の景物にあります。

この作品では割と多くの人々が描かれていますが、一般にロランの絵の中における人間は、雄大で美しい自然の中の点景に過ぎず、彼の風景画に対するそのようなアプローチは、どこか東洋の山水画にも通じるものがあるような気がします。

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コメント

こんばんは、

ロランですか^^。絵も好きです。 この頃の人たちは、写真が無かった分だけ
人の姿や 動きや話し声も聞こえるかのように 写しだされるのが面白く好きです。
それが、過去をイメージしたものであっても・・。 日本画に通ずる・・・ものですか、、

う、、、全く違いますが 芭蕉や 私の好きな蕪村などに 距離感が似ている
ように 思いますね。どこか、、、。

> kawasemi さん

「この頃の人たちは、写真が無かった分だけ人の姿や  動きや
話し声も聞こえるかのように 写しだされるのが面白く好きです。」

まったく同感です!
当時は写真がなかったので、懸命にデッサンなどして、
いかに上手く人物を表現しようかと、心を砕いていたでしょうが、
その分、絵に画家独自の「味付け」のようなものが
おのずとされているようで、興味深いと思います。

この絵は、ロランにしては珍しいほど人物が多く描かれていて、
その分、臨場感(人いきれ)のようなものが強く感じられます。

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