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2012年2月 7日 (火)

月   デリウィグ   (ロシアの抒情詩 1)


ゆうべ、おれはパイプをくわえつつ窓辺に座っていた。

窓からは、月の悲しげな顔が見えた。


遠くで奔流のざわめく音が聞こえ、

丘の上に立ち込めた霧が見えた。


おれの魂は疲れ果てていた・・・ 突然、おれはぶるっと身震いした。

過去の出来事がまざまざと思い出されたのだ。


銀色に輝く月明りの中に、

見目良きリーラの姿が現れた。


あの時と同様、性悪女はおれにこうささやいた、

《あたし、もう永久にあなたのものよ。お月様に誓うわ。》


あの時と同様、月は黒雲の向こうに見えなくなった。

闇がおれたちを再び別れ別れにしてしまった。


おれはパイプから煙を吹き出すと、一度大きなため息を

ついた。そしてかぶっていた帽子を目深にずり下ろした。




Луна  1822   А.А.Дельвиг




アントン・アントノヴィチ・デリウィグ(1798~1831)は、リツェイ(学習院)時代に、のちにロシア最大の国民詩人となったプーシキンの親しい学友であり、公共図書館に勤務し、抒情詩を得意とした。

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