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2012年1月20日 (金)

中国の五大小説(下) [著]井波律子

有名な小説なので、いつか一度は読んでみたいけれど、そのあまりの長さに圧倒されて、なかなか読めずにいる、そんな文学作品を、誰しも一つや二つ思い浮かべることができるのではないでしょうか。

私も、そんな作品をいくつか挙げることができますが、今までは大体、映画化されたものを観たり、短縮されたバージョンで読んだりして、一応事足れり、としてきました。

「中国の五大小説」(どの作品も相当な長さを有する)のうち、「西遊記」は年少の頃から、あの孫悟空の活躍するお話として親しんできましたし、「三国志演義」は、去年完結した、小前亮氏の書いた、ジュニア向け(もちろん成人も十分楽しめる)の「三国志」を堪能したばかりでした。

ところが、他の「水滸伝」「金瓶梅」「紅楼夢」の三作品については、それらに関するほんのわずかばかりの知識を持っていたばかりで、ほとんど手つかずの状態でした。

中国の古典文化、とりわけ文学に少なからぬ興味を抱く私としては、この作品群にいかにしてアプローチすべきか、いささか気になるところでした。

2009年に上梓された、この「中国の五大小説(下)」は、私にとって、いわば「渡りに船」ともいうべきものでした。

この本は、(上)と(下)の二巻本になっていて、(下)のほうに前述した三作品が収められています。

どの作品についても、著者の中国文学に関する深い蘊蓄が十分生かされていて、その流麗な文章と相まって、読者にこの傑作群のエッセンスをわかりやすく伝えてくれます。

また、処々に各作品の、いわゆる「さわり」のような部分が、著者自身の訳文で掲載されていて、私のような、各条件を考慮しても通読することのほとんど不可能な読み手にとっては、特にありがたいサービスとなっています。

この本を熟読すれば、三作品の各アウトラインが把握でき、今後余力があれば是非通読してみたいと思うようになるほど、魅力的な古典としてのイメージを植え付けられそうです。

ただ、私自身としては、前述しましたように、あまりにも長い大長編小説については、映画やダイジェスト版で一応よしとする性向なので、これら三作品についても、この好著に書かれている内容で、まずは満足できました。

中国文学の古典の中には、これら「五大小説」のほかにも、「西廂記」「琵琶記」「長生殿伝奇」「桃花扇」のような戯曲、「今古奇観」「儒林外史」といった長編小説がありますが、どの作品も、一般の日本人にとっては、少しとっつきにくいものとなっているようです。

これらの作品についても、将来、この本のような好個の入門書が現れてくれるといいと思います。

『中国の五大小説(下)』

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