2020年1月26日 (日)

落葉

        落葉 

 

 はるか昔の学童期、季節は晩秋であったが、遊び仲間の少年の家にお邪魔したことがある。

 家の者は皆外出しており、物音ひとつしない静寂がそこにあった。

 こぢんまりとしたダイニングキッチンに瀟洒な食器戸棚があり、その前で話をしたのだが、内容については何一つ覚えていない。ただ記憶に残っているのは、傍らに大きな窓があり、昼下がりの穏やかな光が差し込んでいたこと。

 窓外の木立からは黄金色の葉がはらはらと舞い落ち、そのはかない姿がアンティーク風の趣を呈する戸棚と相まって、時たま心に蘇る。

 ひっそりとした空間。食器戸棚と落葉、そして午後の淡い光。風のまにまに去来するあえかなイメージ…

 

           2020年1月25日

2019年11月20日 (水)

月に憑かれて

     月に憑かれて

 

 

今宵 また あの月が

まん丸い不毛な天体が

真っ黒けの夜空を背にして ぽっかりと浮かんでいる

 

この疲れたまなこは 陶然として汲む

ほの暗い黄金色した月影のワインを

 

昨晩はお目にかかれませんでしたが 今晩は現れましたね

気まぐれなお月様

 

地上のさすらい人にとってあなたこそは慰安

いつもほんのり心に沁みてくるのです

どこでお会いしても 馴染み深いそのお姿が

 

        

        2019年11月20日

2019年9月22日 (日)

「道路と土手と塀」

    「道路と土手と塀」

 

 

ついに

お目当ての絵の前に立つ

 

画家R.Kの風景画の白眉

 

白い塀のつややかなマチエール

坂の上は浮き立ち

青い空にはうっすらと雲が浮かんでいる

 

土手際の樹木はほのかな風を匂わせ

リアルな電信柱の影

精緻に描きこまれた草…

 

東京駅の赤レンガの駅舎の中

至高のポエジーを体感した

生涯忘れえぬひととき

 

 

      2019年9月22日

2019年8月 9日 (金)

暑気

     暑気

 

 

真夏の午後零時

 

照りつける太陽が中天にあるので

街角に日陰はほとんどない

 

涼に餓(かつ)えながら

行きつけのカフェめざして

むんむんする暑さの中を突っ切っていく

 

クーラーが効くのは屋内だけ

 

どんなに文明が進化しようとも

外を涼しくするなんてできやしない

 

百年後も

二百年後も

人はこんな暑さの中を

黙って突き進んでいくことだろう

 

今のこのわたしのように

 

 

        2019年8月9日

2019年7月14日 (日)

天気雨

     天気雨

 

 

雨があがって

明るい日が射していた

 

なのに

パラパラと降りかかってきた水のしずく…

 

お日様と雲がやらかした

お茶目なコラボレーション!

 

 

        2019年7月14日

2019年6月29日 (土)

目印

     目印

 

 

なぜかいつも

そこで

電車を待つ

 

地下鉄のプラットホーム

 

さるリーズナブルなホテルの広告の正面

 

パネルの片側で

緑の帽子をかぶった女社長が

ご満悦げにこちらを見ている

 

 

        2019年6月29日

2019年6月15日 (土)

ミルクスタンド

     ミルクスタンド

 

とうの昔に消え果てていると思っていたものが

あったのだ

 

ミルクスタンド

 

秋葉原駅のホーム

昔ながらのあの位置に

あのたたずまいで

 

パンと牛乳を交互に口に運んでいる

客人たちの姿も健在だ

 

めまぐるしい変化を遂げつつある秋葉原にあって

なお変わらないもののゆかしさ…

 

立ちながらにしてパンとミルクをほおばれる手軽な売店

 

ミルクスタンドよ永遠に!

 

        2019年6月15日

2019年6月12日 (水)

     朝

 

 

根気よく降り続いていた雨も

どうやらお疲れのよう

 

梅雨の雨あがりは

あの湿り気を帯びた空気が心地よい

 

広い車窓を横切っていく

くさぐさの風物

 

荒川は眺望はるかに滔々と流れゆき

 

飛鳥山公園の紫陽花は今年も盛況

 

尾久駅は相変わらずひなびていて

 

広漠たる雲がちの空に

清澄なる青い晴れ間が見えた

 

 

       2019年6月12日

2019年6月 5日 (水)

公園のベンチにて

     公園のベンチにて

 

まちなかの公園には

そんなに楽しいものはなさそうです

 

あまりきれいでもないベンチが

広いスペースを取り巻いていて

 

みなさんそれに腰掛けて

煙草を吸ったり スマホをいじったりされていますが

 

なんとなくけだるいような

退屈そうなご様子です

 

時々 笑顔で話を交わす仲間たちや

仲睦まじいカップルも見受けられますが

公園そのものをエンジョイしているわけではないでしょう

 

煙草の吸殻やコンビニの袋が落ちていますし

所在なさげに歩を進める鳩も

小さな花壇に咲く花も

どこか垢じみています

 

まちなかの公園には

そんなに楽しいものはないのです

 

あるものといえば

粉塵にまみれて色艶の衰えた樹々と

思いついたように吹き過ぎてゆく風ばかり…

 

        2019年6月5日

2019年6月 1日 (土)

好ましきもの

     好ましきもの

 

 

壁にかかっている絵

 

巴里

セーヌ川

すがれた樹木

陰鬱な空

 

オフィスの廊下にビュッフェの風景画は必要だろうか

 

ただ

癒される者は癒されるのだ

 

 

     2019年6月1日

2019年5月11日 (土)

テレコムセンタービル展望台

お台場のテレコムセンタービルの21階にある展望台に行きました(午後6時から7時ごろまで)。

夜景に定評のある展望台ですが、情緒あふれるひともしごろのパノラマが印象的でした。

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2019年4月17日 (水)

大観覧車

お台場のシンボル、パレットタウンの大観覧車に乗りました(午後5時半頃)。

強風で揺れるシースルーのゴンドラはちょっとスリリングでしたが、

いい思い出になりました(最後の4枚は青海駅で撮ったものです)。

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2019年4月 3日 (水)

ノスタルジー

     ノスタルジー



沈みゆく夕日を見た


高層ビル群の少し上方 茫漠とした灰色の空の中

ほっそりとした白雲がたなびいている薄黄色い日輪


遠い昔 山の端に落ちかかっていたあの入日と寸分もたがわない


あふれ出る郷愁が

限りない安らぎをもたらしてくれる


          2019年3月31日

2019年3月21日 (木)

落日

      落日


原付に乗って陸橋を上り始めた時
バックミラーに映り込んできた夕日

ふるえながらもはっきりと
かなたの地平線上で
あざやかな紅色に染まって

つかの間のドラマに触れた冬の日の夕まぐれ


           2019年3月21日

2019年3月16日 (土)

日だまり

日だまり

 

 

そこだけが明るく輝いていた

 

冬の日の午後

塀際で

 

そこは別世界

 

そして

そこだけが光に祝福されているのだった

 

 

2018年3月16日

2019年3月10日 (日)

山並み

 

山並み


かなたに うっすらと山並みがたなびいている


薄青色
の空に溶け込み

無言で横たわるその朦朧とした影


悠久なる自然の造形に

時の経つのも忘れて対峙し

しばし忘我の境地をさまよう



2019年3月10日

地蔵

地蔵

 

 

黙って立っているお地蔵さん

 

おすまし顔で

ニコニコ顔で

はたまたお茶目顔で

 

鼻がそげても

指がとれても

何食わぬ顔して

 

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫な石の体をもち

褒められもせず

苦にもされない

 

そんなお地蔵さんが

わたしは好きだ

 

 

2019年3月10日

2019年3月 9日 (土)

ポプラ

ポプラ

 

 

淡い午後の光に包まれ

心地よい微風を頬に感じながら

わたしは見ていた

ポプラの葉の絶妙なそよぎを

 

さわ さわ さわ …

 

そよ吹く風に葉むらを委ね

高々とした梢を顕示する緑の樹

 

さわ さわ さわ …

 

ごく小刻みな揺れは

どこかミステリアスで

なにかを暗示しているかのよう

 

さわ さわ さわ …

 

わたしは見ていた

緑色のコスチュームが

風の魔力でひらひらと踊らされるのを

 

 

2019年3月9日

2019年3月 6日 (水)

牡丹雪

牡丹雪

 

 

はるか昔の冬の日の午後

 

空は曇天 どんよりとした灰色

 

いつしか雪が降り始めていた

 

数限りない大ぶりな雪片が

ふわふわと不思議なくらいゆっくりと落ちてくる

 

思わず差し出した両の手のひら

 

雪はそっと付着すると

すっと溶けて消えていった…

 

次から次へと舞い降りてくる

天からの白く軽やかな贈り物

 

至純なる癒しイマージュ…

  

 

2019年3月6日

2019年3月 3日 (日)

もうひとつの街

もうひとつの街

 

 

冬の朝

 

街なかの壁に描かれている素朴な風景

 

青い空

緑の樹々

白いビル群

 

オレンジ色のアドバルーンも飛んでいる

 

あのなつかしい童心に帰れるような

夢と憧憬に溢れた

明るくモダンで平和な都市…

 

わたしは見た

 

街なかの壁に

もうひとつのノスタルジックな街が生動しているのを

 

 

2019年3月2日

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